こないだNHKでも取り上げられていた、ダル・ペスカトーレのシェフ・ソムリエ林氏が休暇で帰国されていて、かつての同僚だったラッセの村山氏と料理とワインのコラボ会をやることになった。最初に募集をかけたらあっという間に満席になってしまったらしいのだが、なんかいい具合に滑り込ませてもらえたので行ってくる。
いや、今日ナノの誕生日なんだけどナ。カミさんが行けと言ってくれたので、プレゼントだけ仕込んで夕方遅くに家を出た。
開始時間に間に合わない……ってことはないが、結構ギリギリになってしまう。で、ダイヤを調べたが、案外余計なことしないで私鉄とJR乗り継いだ方が早かったりする。まあ山手線が遅延していたので、並行して走ってる埼京線に乗り換えたが。見込みの5分遅れで済んだ。ふー。って、これ山手線そのまんま乗っててもおなじだったんではないかと。まあ埼京線空いてたのでいいのか(山手線はかなり混んでた)。
いつもの階段を降りて入り口へ向かうと、ああ、なんかすでにオレ場違いな感じがぷんぷんしてくる。受付でならんでる人たちご夫婦連れで、身なりも立派だし。一応一張羅は着てったが、すでにくたびれてるし、コートも毛玉浮いてきてるしなあ。
あとなんつってもひとりでしょ。やっぱりこういう時は浮くよなあと。誰か誘うべきだったかといまさらながらに思うが、よく考えたらぎりぎり滑り込みなんだから無理だろうっていう。まあカミさん差し置いて他の人間誘うのもどうかと思うし(ナノいるのと仕事直後で無理)。
どうやらほとんど最後の客だったらしく、後に誰もいない中、緊張しつつ店内へ。で、挨拶して、記帳して、お金払って、おひとりさま席へご案内される。4人掛けの相席で、向かいにいる人には見覚えがあったというかほぼ確信めいたものがあったのだが、○○さんですか? とか聞くのも失礼千万なので黙って席に着いたらいきなり名刺交換になる。ぎゃー、汚い(安い名刺入れに入れっぱなしだったので、金属がこすれて端が灰色になっちゃってる)のしか持ってきてないよ! そして思った通りの人だったよ!(すごい有名なイタリア料理のシェフ) いいのか、こんなの(=自分)が向かいに座っててと思いつつ、どうしようもないので小さくなって座る。というか、左のおふたりはそれぞれなんだか志の高い方々で、ただ食うのが好きっていう人間は本当に場違いだろうと思う。
まあみなさんこっちのレベルに合わせてくださったので、なんとか最後まで食事はまっとうできたのだが。
献立は、いつもいただいているものが多かった。いやこれは悪い意味じゃなくて、ここは定番を何度食べても飽きないので、むしろ今日主役のワインの方に集中できてよかったというところ。特にここの羊はうまいのだ。イタリア料理の煮込みは煮込みすぎが多くて、「もっといい具合に炊いてくれ!」と思うことが多い(したがって信用できるところ以外ではめったに頼まない)のだが、ここは焼きも煮込みもじつにいい具合なのだ。何度食べても本当に飽きない。これは凄いと思う。
というわけで食事開始。
まず食前酒としてプロセッコ(? 忘れた。なんていい加減な)が出る。しばらくそれを飲みながら歓談した後、白ゴマのクロッカンテが出る。ゴマ入りの粉を薄く焼いたもの(でいいのか? ゴマだけじゃないと思うが)を、容器に満たした白ゴマの上に立てて出してくれる。食事前のスナック。そこで出たのは比較的新しい蔵のフランチャコルタ。これで前菜の前半を。
で、どんなワイン(スプマンテ)だったかというと……すでに忘却の彼方。ダメじゃん! ただ、最初のスプマンテがドライな感じだったのに対して、もっと柔らかくて、香りが立っていたような気がする。カボチャのスープと野菜のバーニャカウダに合わせたものだったので、そんなに主張の強いお酒ではなかった記憶がある。というか、買って帰ろうかと思った1本(これは結局あきらめたけど)。
ああそれにしても、ガツガツ呑んでたので良く考えると非常に恥ずかしい話。すぐグラス空けちゃって、でもってガンガンついでもらえるので(よかったのか? 本当に?)、この段階ですでにかなり回ってたような。ううう。
カボチャのスープは、ダル・ペスカトーレでも出ていたもので、もちろん材料が違うのでおなじ味ではないものの、負けないくらいいい味だった。味がしっかりしているが、やさしい。これは、ここの料理全般に言えることだが(そしてダル・ペスカトーレ)。
バーニャカウダもそうで、大蒜の固まりのようなソースのはずなのに、そんな感じは微塵もない。でも、味がしっかりしているので、ちゃんと食べた感覚がある。まあなんてハイソな。
それから、ダル・ペスカトーレやこのお店の看板料理でもあるオマールのテリーヌ(これも何度食べても飽きない料理のひとつ)。ここでワインはサルデーニャの白(ヴェルメンティーノ100%)にチェンジ。あらゆる魚介に合う感じのステキワインで、水のように呑めてしまうが、香りも上品だったし、味もしっかりしているという不思議なもの(結局これを買って帰った。たまたま在庫があったので、持ち帰ることができたという)。
料理に合っているというのはもちろんだけども、酒がとにかくうまいので、料理食べ終わってからも延々呑んでました。この段階でよく酩酊しなかったもんだ。
次は少しクセのある白ワインで、アルト・アディージェのBRENNTALという白。これはちょっとクセがあって、合わせにくいものらしい。それをチーズのトルテッリと。包み系のパスタが大好きなのだが、ダル・ペスカトーレのある場所ってまさに本場中の本場なので、当然そこでやっていた村山氏の料理もうまい。チーズを何種類か合わせてリピエノ(あん)にしたり、出汁で解いてソースにしたりしているのだが、じつにいい。よくあるゴルゴンゾーラのペンネとかだと敬遠しちゃうのだが、これだけ柔らかい味に仕上がってると文句のつけようがない。
で、この白はチーズを使ったトルテッリにじつによく合っていて、しかも時間がたつと風味が変化するのでより楽しい。これもがっつり呑んだ記憶しかない。うう。
そこでミックスベリーのソルベをはさんで、最後に羊。ローストと煮込みの盛り合わせ。サンジョヴェーゼ・ディ・ロマーニャ。もうこの辺、ワインに感してはひたすら美味しかったという印象しか残ってない。もっとなんかあったはずなのに! まあ別にオレソムリエ目指してるとか、料理人になろうとかそんな大それたこと考えてないのでいいんだ。刹那的に美味しいごはんが食べられればそれで。
その後、デザート(これがまたうまいんだ。トルタ・アマレッティは絶品なので、絶対食べるといいよ!)、小菓子、カッフェと続いておしまい。デザートにはパッシート(デザートワイン)が出た。ヴェネト(?)のヤツだと思うけどわかんない。もう覚えてないなー。ひどいなー。
てな感じで延々4時間。もちろん終始食べていたわけじゃないけれども。
正直、まぜてもらえてよかったです。場違いかなーと思ったし、やっぱり場違いだったんだろうなあとも思うのだけど、まあ食べ始めちゃえばどうでもよく、だいたい相当量呑んでたので、もう周囲の視線なんか気にならなくなってたというか。おかげで料理も存分に楽しめたし、お酒もたらふくおいしくいただけたので、もう本当によかったなと。しかもたぶんものすごいお得値段で(下世話な話だけども)。
あー、しあわせ。なんかこれでしばらくがんばれそうな気がしてきた。
しかし、帰りの電車、よく乗り過ごさなかったな。ああ、深夜の電車なので、あそこ終点だったような気がする。そんなアナウンスしてたし。まあ全体的についてましたな。そんな一日。
明日はいろいろ約束事を果たすために動く予定。しっかりせんと。