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2003年1月14〜21日イタリア旅行記

TOP   3 

3.そして、ホームパーティに招かれる。

 その翌日、前夜遅かったにもかかわらず、アキさんご家族とともに、わたしたちはクルマで20分少々ほど行った場所にある、アルドさんのご自宅へ向かいました。
 アルドさんのお宅は、外から一見すると標準的なアパートメントなのですが、中に入ってびっくり。日本のその辺にある高級マンションなどとても及ばないような、手間のかかったこだわりのある空間がそこにありました。
 別に、なにか派手な飾り付けがあったり、見るからに高価な調度や美術品が並べてあるというわけではありません。内装や調度も、値段やブランドなどを聞けばものすごいものなのですが(たとえば、お部屋の床はフローリング張りなんですが、じつはこれ、大理石張りよりお値段の張るものだったりします)、それが別に目立つわけでもなく、あくまで全体の調和を考えたものだったというわけです。
 そう、あえて例えるなら、じつは猛烈にお金をかけてあるけど、見た目はじつに落ち着いた和室とおなじ雰囲気と申しましょうか。
 要するに、金持ち趣味なのではなく、自分たちの納得の行く空間を徹底して作

ÉCÅ[ÉGÉXÉuÉbÉNÉXÉgÉbÉvÉyÅ[ÉW

ÉNÉçÉlÉRÉÑÉ}ÉgÇÃÉuÉbÉNÉTÅ[ÉrÉX

アルドさん宅の広間に飾られていたお花。

たというか。アルドさんご夫妻が望んだものを形にした結果、たまたまお金がかかってしまった、そんな空間でした。だから、アルドさんの人柄もあって、そこは見た目にはじつに控えめながら、子細に眺めてもまったく粗が見当たらないというか、逆に考え抜かれ、本当に細部にまでこだわったものがつぎつぎと見えて来るというか、そんな場所だったのです。
 そしてなにより、その場所は、訪れた人間を本当にくつろがせてくれるところでした。
 しかし、それ以上にすばらしかったのは、アルドさんご夫妻そのものでした。おおげさに騒ぎ立てるわけではなく、逆にこちらが緊張するほど気を遣うわけでもなく、ほとんど言葉の通じないはずのわたしたちが、心からほっとできる間合い、とでも言いましょうか。
 もちろん、アキさんとその旦那さんであるニーノさんがいてくれてのことでもあるんですが。

 さて、アルドさんのお宅にはもう一組の招待客がいらっしゃいました。ミンモさんご夫妻です。やはりアルドさんのご友人である彼は、とても陽気で気さくなナポリの人でした。ミンモさんは電気工のお仕事をされていて、奥さんはなんと弁護士さん。連日のハードワークの疲れでちょっと口数少なめでしたが、バリバリのキャリアウーマンという感じでかっこよかったです。
 ミンモさんは本当に陽気な方で、言葉はほとんどわかりませんでしたが、アキさんの通訳とボディランゲージやらなにやらかにやらで、細かい意味こそわかりませんでしたが、どうしても話の輪から外れがちなわたしの

手をしてくれていました。
 一見すると気を使ってくれているような感じではありませんでしたが、おそらくミンモさんは気にしてくれていたのだと思います。
 とにかく、おかげで変な間が開くこともなく、身体の疲れも忘れて(じつは、まだ本調子と言える状態ではなかったのです)、パーティを楽しむことができました。本当の話です。
 そんなこんなで、食事前の時間はまったく飽きさせられることなく、あっという間に過ぎて行きました。トイレのついでにジャグジーつき(!)のバスルームを見せてもらったり、アルドさんのキッチンを拝見したり(すごくきれいで整頓されていました)、応接間の調度の値段を聞いて仰天したり(たしかにいい品物ではあったけども、あそこまでするとは……いやびっくり)、いまでもあの時の光景が思い出されます。
 さて、食事の準備をしていたアルドさんが、木箱から取り出して棚の上に置いたものがありました。それは赤ワインのマグナムボトル(1.5リットル)だったのですが、ラベルを見て驚きました。

TAURASI'98のマグナムボトル。日本だと、普通でも相当なお値段のお酒なのだけれど……後ろの調度品にも注目。本当に品のいいお部屋でした。

 もちろん、ワインに負けず劣らず、アルドさんお手製の料理もすばらしいものでした。
 前菜だけで6〜7皿あったように記憶しています。グラスが割れて、その破片が前菜の一皿に入ってしまい、食べずに捨ててしまった(まあ危ないですからね)というアクシデントはありましたが、それでも全然減ったように思えない(そのお皿が楽しめなかったのは無念のきわみではありました)ものすごい前菜の嵐。
 個人的にお気に入りだったのはサーモンのマリネとアンチョビをソテーしたもの(?)。小さな小さな巻き貝をトマトで煮たものは、ナポリの名物らしく、トマトの味がいくぶん勝ってはいましたが、歯ごたえがあって珍味でした。
 しかし、それらの中で最高だったのは、アルドさんお手製のリコッタチーズの前菜でした。型からとり出した円形リコッタチーズにトマトを乗せてルッコラを添え、塩、コショウ、オリーブ油をかけたものですが、これが絶品。チーズの持っているほんのりとした甘みと申しましょうか、それと嫌みのない乳製品独特の香りが、もう最高としか言いようがないバランスで、後にも先にも、こんなチーズ食べたのは初めてです。
 わたし、お豆腐とか揚げとか湯葉とか大好きなんですが、そのうまさに通じるものでありながら、乳製品独特のコクも持っているという、ものすごい逸品でした。一皿全部欲しかったほどですが、そんなことしたらシメられそうな(笑)雰囲気だったので、2切れほどでやめにしました(たしか)。でも正直、もっと欲しかったです、あれ。
 周囲の反応を見ていても、わたしの感想は間違っていなかったらしく、チーズはあっという間になくなってしまいました。

前菜の数々。上からアンチョビ、タコ、そしてリコッタチーズ。

 と、言いますか、これ、自家製なんですよね。どこかの名店のチーズとかではなく。アルドさんの腕はもちろんですが、これほどのものを作るためには、よほどの手間と細心の注意を払わなければならなかったはず。それを考えると、あらためてアルドさんという方の接客に対する真摯さというか、そのレベルの高さにはただ脱帽するばかりです。

 長い長い前菜のパートが終わり、つぎにパスタです。
 これはじつは前夜に予告があって、アルドさんがまる一昼夜かけて作ってくださったというラザーニャでした。
 チーズたっぷりの濃厚なラザーニャは、アルドさんが「最高の出来」と自慢する通り、そこらでは食べられそうもない美味さでした。チーズとソースがたっぷりで、2皿ほどおかわりをしました。なんて幸福なんだろう

思わず心の中でつぶやいた瞬間です。
 パスタはその1品で、続いてメインの魚料理が出されました。
 その日、アルドさんはアンコウを入手して、これで魚のスープを作ってくださいました(いわゆるズッパ・ディ・ペッシェってやつですね)。
 最初は、ひとりずつに頭を使ったスープが出ました。これだけでも十分美味&たっぷりだったのですが、その後、アンコウの胴体を使った大皿も出てきました。アンコウのぷりぷりした淡泊な身が、トマトやアーティチョークなどの野菜とじつによく合っていました。オリーブ油などと合わせるだけで、あの淡泊な魚がこれだけ濃厚な味になるとは。

アンコウを調理しているところ。アルドさん、プロの料理人みたいでした。

 さすがに料理はここまで。もうお腹一杯で、動けないほどになりました。いま、こうして文章に起こし直していると、もう一度コースをやり直したい気分になりますけど。諸般の事情から、このレポートはパーティから1年近くたってから書くことになってしまいましたが、それでも、あの時のお料理や味ははっきりと覚えています。
 その後、デザートとしてバナナのお菓子が出されました。たしか、バナナをソテーしてリキュール(?)でフランベしたものに甘いソースをかけたものだったか。お腹一杯のはずでしたが、このデザートは素直に入りました。バナナの香りとアルコールを飛ばしたお酒の風味がぴったりで、濃厚なはずなのに負担にならない。

バナナを文字通りフランベしているところ。甘すぎず、重すぎず、上品な味でした。

うやらアルドさんも、料理で十分満腹になることはわかっていて、あえて軽いデザートを選んだようです。
 その後、自家製の食後酒(レモンチェッロと、もうひとつなにかあったはず)をいただき、食後の時間を過ごしました。
 食事の開始から、途中、何度か休憩をはさんで延々4時間近く。気がつくと、それだけの時間が過ぎていました。
 食事のおいしさはもちろんなのですが、一番感銘を受けたのは、食事を楽しむということを身をもって体験

きたことでした。
 大部分の日本人は、いくらスローフードと謳っても、結局どこか定食屋で飯をかきこむという感覚を捨て切れないところがあります。それが、ここではまるきり逆になっている。なんと楽しく、なんとうれしいことか。
 時間をかけて、思いきりご飯を食べて、お話をして、その場を楽しんでもそれはいけないことではないのです。頭ではわかっていても、実際に経験するのと、そうでないのとでは大違いでした。
 それが、ナポリで……いえ、この旅全体での一番の収穫だったと思っています。

広間の「隅」に置かれていた大テーブル。8人が余裕でかけられるがっしりしたものでした。

 アルドさんのもてなしはその後も続き、最後にはお土産までいただいて、ようやく帰途につきました。悔しかったのは、せっかくいただいたレモンチェッロを不注意から割ってしまったことです。本当に残念で、お土産を無駄にしてしまったことに、いまでも申し訳ない気持ちでいっぱいです。