6月28日

カターニアの朝飯

朝飯。宿が隣のバールと契約してて、朝食券で引き換える方式。パンと飲み物が結構な種類の中から選べる。全部甘い系。

 爽快な目覚めの朝。3時間しか寝てないはずだが、SleepCycleでは快眠度70%を超えている。うっそーんと思ったが、こういうの滅多にないし、信じようということに。
 宿のご主人はとてもとても親切で、こんなによくしてもらっていいのかってほど。この宿のためだけにカターニアに来る価値があるよマジで。あー、ここで何泊かしたかったなあ……宿だけ移動してついてきてくれないものか(無茶言うな)。

 それにしても。なんか、日本出るときはシチリアの気温は全体的に低いような予報だったのだが、 う そ を つ け ! もう暑い暑い。普段に比べれば涼しいのかもしれないが、そんなもん程度問題だ。
 というわけで、普通のパンツしか持ってきてないことを猛烈に後悔。まだこの辺はいい。エアコンあるしな。
 まあ現地でバミューダパンツでも買うかと思い、とりあえず朝飯後、チェックアウトしてから宿の並びにあるTIMで昨日からうんともすんとも言わないSIMについて調べてもらう。
 気さくなにーちゃんねーちゃんがいろいろ見てくれたけど、結局登録そのものができていなかったようで、1時間ほどすったもんだした挙句再発行で決着した。後ろに並んでる連中が睨んできたけど、違うんだよ、別にゴネてるんじゃないんだよ、待ってって言われたから待ってるんだよ、それにちゃんと金払って申し込んだのに使えないって殺生じゃん。ってイタリア語で言いたかったなあ。

宿を出たところ

宿は目抜き通りにある。でもって安い。ハイシーズンなら、たぶん取れないんじゃないかと思う。

 雰囲気で相手の言いたいことはなんとなく掴めるんだけど、答える語彙がない。ホント、次来るときはせめてコミュニケーション取れる程度の語学力は必要だよなあ。単語レベルでいいんでさ。動詞の活用ガーとかいう前に単語覚えよう。

 さて、SIMがなんとか使えるようになり、チェックアウトの時に教えてもらった通りバスに乗る。
 いやね、ちょっとカターニアからミラッツォへ向かう足が不安で、宿のご主人に聞いたのね。したらしっかり調べてくれてさ、まず電車は午後遅くまでもうない(ちゃんとチェックしておけばよかった。まだ何本かあると思ってた)こと、今日中に島に行きたいならバスを使うしかないことを教えてもらう。バス会社の名前と場所のメモまでもらい、ありがたさを噛み締めながら出る。しかも、「何か困ったことがあったら電話してね」とまで。ありがとう。電話だとたぶん話が通じないけどナ! 英語で話してくれてるので、英語ならなんとかなったのかもだが、いやビビりだから無理だったかなあ。相手に迷惑かけちゃいかんと思ったりしてたし。そもそもここがいかんのだろう。
 で、このご主人(あ、奥さんもいい人でした。二人とも若くてかっこいいのよ)に感じたものを、駅前の人たちにも感じられなかった自分は、すでにこの時点でおかしかったんだと思う。いや、バス溜まりうろついてたら、声かけてきたおじさんがいてさ、最初無視してたんだけど、結局目的のバスの乗り場を教えてくれたのそのおじさんでさ。なんかもうだめだ。いろいろと。
 もちろん、下心あって近づいて来る人間もいるだろう(おじさんも、こっちがフリーならなんかバスの券を売りつけようとしてたかもしれないし。そういうカバン持ってた)が、それを疑って最初から距離を置くのは違うよなあ。とりあえず話してから「それはいいや、ごめんごめん」でいいわけで。接触しちゃダメな人なんかさすがにそんなにいないし、そもそも見た目でだいたいわかるし。
 思えば、この旅行前まで、イタリアではほとんど嫌な記憶がないんだけど、それはこちらから相手の善意を疑わなかったからではないかと思うわけで。それが欠けていたのが、今回の旅行を面白くした大変なものにした原因だったように、いまになると思うわけだけれども。

ここどこ1

バスは駅に背を向けて延々と走り続ける。ここなんかまだいい。街中だから。

 で、話を駅前の1時間ほど前に戻す。
 TIMの目の前のバス停からバスに乗る。路線はよくわかってないが、とにかくホテルのそばのバス停は、全部駅前へ通じてるからって言われたので(嘘ではなかった)、なんも考えないで来たのに乗ったわけだ。
 まず、車線の向きが逆なのをその一瞬忘れてて、すぐに思い出したんだけど、まあいいかってそのまま乗ってったわけね。
 正直甘かったよね。それから小一時間、延々郊外に向かって一直線ですよ。循環路線ではあったんだけど、とにかくもうなんかスマホのマップ見ててうきうきしましたね。どう考えても明後日の方向に向かってくんだもん。時間ないっぽいのに!(ちゃんと確認できてない。バスは時間割とか調べようがないところがあって)
 もう半笑いでバスの窓から外の景色撮ってツイートするよね、そりゃ。
 いやー、期せずしてカターニア観光だよ。しかも旧市街ガン無視で。
ここどこ2

ここが最遠点かなー。ええもう民家がまばらな郊外ですよ。でも市街より暮らしやすそうな感じがしたのは内緒。

 でまあ、仕方ないので(とりあえず落ち着くと悪くない結果が待ってるということは、昨日あたりからの一連の出来事で学習しつつあった)、ストロンボリ行きの船について調べたりする。なんか予約した船には間に合いそうにもない空気で。したら実際にそうで、どうやっても間に合わない。途中でタクシー拾って急いでもらっても怪しいくらい。
 なもんで、他に路線がないかと調べたら、これがあって。なんと、バスの経由地というか、メッシーナってところで一旦降りて乗り換えなきゃならないんだけども、そこから直行で船が一本出てることがわかったのね。しかも、ミラッツォより30分遅い時間に。
 本当についてましたよ。バスをメッシーナで降りてから、すぐに船着場を探して移動開始。国鉄の窓口で教えてもらってなんとか見つけ、チケット購入して一息。とにかくその便が実在すること(そこまで疑うかw)、時間も調べた通り正しかったことがわかり、とりあえず現金を手に入れるために、ATM探してあたりをさまようことに。
メッシーナへ

メッシーナへ行く途中のバスの車窓から。バスではwifiが使えることになっていたが、どうやっても登録できんかった。

 いやしかし、着いた時から感じてたんだが、どうも町並みが薄汚い。もともと古い建物の多いところはそんな感じではあるんだけど、落書きが多かったり、割れたガラスがそのまんまだったり、まだ犯罪のニオイはそんなに感じなかったけど、そういう状態に移りつつあるような雰囲気。夜だったら、カターニア同様にかなり怖かったかもしれない。
 不況ひどいのかなあ。シチリアとか大変だって話をどっかで聞いたし。たまたまだったらいいんだけど。
 さて、サンパオロっていう割とメジャーな銀行を見つけてお金を引き出し(手持ちが少なくなってたので、島にATMなかった時のことを考えて。杞憂でしたが)、近くにあった食堂に。なんかチェーン店つーか、いや違うな、こう、ファミレス的な品揃えの小ぎれいな店だったけども、内容は悪くなかったです。前菜扱いの肉団子は、正直これメインだろって量で、牛肉だか水牛の肉だかを団子にした、結構大きいのが十何個(オレでもちょっと目が泳ぐくらい。昔は量に感激したもんだが)。パスタはああ、もう忘れたけど、なんか白いソース(チーズ系かな)のスパゲッティで、これも山盛り(日本的な意味で)。しかもグラスワインはサイゼのミニデカンタくらいの量が(いやさすがに250ccはないか。でもこれ2杯飲んだから、ミニデカンタよりいった気がする)。セコンドは時間の関係で頼まなかったし、それで正解だったけど、量的にも頼んでたら終わってたかもしれない。
 最初の印象とはうってかわって、大変結構な内容でありました。
 ただ、なんだかんだで出航時間が迫ってて、ちょっと慌て気味に急いでもらえませんか? ってスマホで翻訳アプリ頼りに聞いてみたら、なんかわかってくれて、急いで出してくれたのもとってもありがたかったです。
 さー、あと10分強だ、急ぐぞーと思って通りに出たら、そこ、海岸沿いで、波止場のフェンスの門抜けてまっすぐ行くと、5分しないで最初の場所にたどり着けたっていうですね。銀行探してくねくねとややこしい道を歩き回っていたので、桟橋から相当離れちゃったって感じがあったんだけど、むしろショートカットしてたという。

メッシーナ海峡から

でかい客船が見えたので、なんとなく。出航して30分も経っていなかったように思います。

 桟橋に着くと、まだ船は到着していなかった。乗客が列作っていたんで、「ストロンボリ?」と聞くとそうだっていうんで安心。まさかとは思うけど、もう出ちゃってたらどうしようかと思いました。
 で、出発時刻ほんの数分前に船が到着。乗り込んでぼんやりする。なかなか出ない。いやいや呑気なものだ。いいぞ。こっちはもう船が向こうにたどり着くのに任せるだけなので、なんとも気楽なもんで。
ストロンボリの場所

途中は当然電波が断絶状態だったのだけど、先に地図をロードさせておいて、GPSだけで現在位置をトラッキングさせていたのだった。帰りは島の間を縫ったので、電波途切れなかったなあ。

 結局船は10分遅れで港を発った。クルマの乗らない水中翼船なので、揺れは大きめだが飛ぶように海上を滑っていく。フェリーだと3時間コースが2時間くらいで到着。最初からこっち予約しておくべきだったかなー。
 というわけで帰りの便を検索してみたが、やはり世の中そんなに甘くなくて、ストロンボリを出る朝の便は、昼前にミラッツォに到着するのが一番早かった。無念。
 途中、豪華客船を脇に見ながら、船はメッシーナ海峡を越え、その先に浮かぶ火山島へと到着。写真通り、平地は海岸沿いにちょこっとあるだけで、ほぼ斜面に街が築かれた島がそこにありました。よし、まさに冒険! この秘境の島で、オレは未曾有の経験をすることになるんだぜ!

 なんつって。まあ想像と違うよね、普通。
 まず、桟橋から目抜き通りに入った途端人、人、人、人の波。海岸つーか砂浜にも海水浴の人がわんさといて、屋台は出てるわ、ホテルとか民宿は山のようにあるわ(流石に巨大なのはなかった)、

ストロンボリの石碑

ここがストロンボリだってことさらに主張する石碑。別に悪いとは言ってない。

よく考えたらハイシーズンの走りな訳で、そりゃあ観光客だらけになるのも仕方ないのはそうなんだけど。
 いやね、ほら、孤島でしかも火山島なんで、こう、もっとストイックな場所を想像するじゃないですか。物好きしか来ないような、本当に辺鄙な島っていうかね。実際、普通の自動車はほとんど走れなくて、カートみたいなクルマばっかりだし、その辺はネットで見た通りだったんだけど、まさかこんなとは……。がっかりはしませんでしたが。なんか結構メジャーな観光地風味。ただし、場違いな建物はないし、なんでもあるってわけじゃない。だから、思い通りでこそなかったが、それはそれなりに。
 なにはともあれ、これで最初の目的地に到着だ。着いたの現地の夕方5時くらいだったので、ここまで来るのに43時間……? 家出たのが6時前だから、42時間かな。まあいいや、細かいことだ。なんか大変なことがたくさんあったような気がするのは、きっと気のせい。
ストロンボリ山

後ろから湧き上がってるのは雲じゃなくて噴煙で。

 ホテルは桟橋の近くにあって、いくらも歩かずに発見。バール併設のフロントに入ってチェックインを終え、部屋に落ち着く。最初はもっと奥のところを予約してたんだけども、結構遠いのと、蚊が多いってんで、急遽変更したのだった。3日くらい前に。いやでも、3日前に取れるようなホテルじゃないよなあ、ここ。値段も普通だし。少し高いけど、この時期の観光地って前提で言えば、この立地だしむしろ安いとさえ。
植生の違いがわかりやすい

ウチワサボテンが普通に自生しているのを見ると、ああここそういう場所だよなあと思う。

 wifiがまったく使えない(廊下側に移動すると突然電界強度が上がったので、ここに中継ルーター仕掛ければよかった)のは別に驚くようなことじゃないので、その辺は電話やタブレットのテザリングで。さすがTIM、こんな場所で4Gの電波5本バッチリ。TIMってのは日本で言えばdocomoみたいなものなので、カバー範囲がものすごい。地方のトンネル内だってGSMでいいなら繋がるし。
 それから一風呂浴びて、ホテル裏の店がたくさん並んでる通りを流し、狙っていた蜥蜴屋(意訳)という食堂で夕飯の予約を。電話だと言葉聞き取ってもらえなかったり、聞き取れなかったりなので、可能なら直接行ってお願いすることにしているのだ。
ホテル裏の目抜き通り

ああ、ここがこの島唯一の繁華街なんだよ。ここら辺、禁欲的といえばそうだね!

 そうして夕飯時まで悶々と過ごす。どんな飯が出るのか。ああ、うっとりだ。と、いままでのオレならそうなのだが、今回は予算に制限があって、体力的な意味でもあんまり贅沢できそうにない気分だったので、そこまでの高揚感はなかった。
 そもそもこれがいけなかったのだろうと思う。量はね、そりゃ身体気遣って減らすのはいいさ。でもケチるのはよくない。これは気分の問題なのだ。
 たとえ戻ったら残金がとんでもないことになっていたとしても、鬱々と塩かけ飯だけを延々食べることになっても、それでも刹那的な楽しみを否定してはいかんかったのだ。いや、冗談でもなんでもなく。オレはなんのためにここに来た? 金が惜しいならなぜ安くない航空運賃を払い、バカにならない滞在費を使って、こんな煙をもくもくと吹き上げる南の孤島くんだりまでやって来たのだ? つまりはまあ、そういうことなのだが、この時点でわかってたらなにも苦労はなかったわけでね。

ホテル前から見た海

海岸線は海水浴場か空き地。

 蜥蜴屋は、軽食屋が多いこの島で、珍しいちゃんとした食堂。値段もそれなりだが、ローカル色の強いメニューを出している。前菜はイワシだったかな。南蛮漬けみたいなの。1皿目はイカのスパゲティだったか。間違いないのは2皿目のエビのグリル。シェフ自ら「でかいのにする?」って聞いてくれたのに、量を少なくしないとと思って、小さいのでいいって答えたら、小さい(つっても立派な車海老サイズだったが)のが4本来やんの。だったら大きいのだったよなあ!
 葡萄酒もケチって(もちろん量を減らすという意味でも)ハーフにしちゃったので印象薄い。種類選べないから。もう色々とダメだ。もしストロンボリもう一度行くようなことがあったら(可能性は低くない。火口を見るトレッキング行きたいからね)、再挑戦しようと心に決めた。
 店は全然悪くないが、印象が最悪の食事になってしまった。こういうのがそれなりに続く。

 結局、いままでのスタンスは変えちゃダメなのだと知った。少なくともうまく行ってるうちは。これに気づけただけでも有意義な旅だったように思う(負け惜しみ)。

 蜥蜴屋からの帰り、狭い路地から見上げた空は、噴煙で見えないところを除けば満天の星空だった。見事。天の川も見えたような気がするが、噴煙と見分けがつかない! ぐぬぬ。

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