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2003年１月14〜21日イタリア旅行記

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１．アオスタの悪夢

　2003年のイタリア旅行は、さんざんな始まりでした。
　2002年の暮れ、えらい高さに積み重なっていた仕事を、翌年年明け早々のイタリア旅行を餌にどうにかこうにか終わらせて、しかしその時点では旅行までまだ一ヶ月強あるからと、次の仕事を無理に進めようとしたのが間違いだったのかも知れません。
　結局、ひと月半かかって、進んだのは本のプロローグ部分のみ。なんだかんだ言って全体の十分の一にも達していません。で、出発前にせめてその倍くらいは書いておきたいと、前日まで徹夜で仕事していたんですが、それが悪かったのでしょう。飛行機の中でのどの痛みを感じた時は、まだなんとかなると思っていました。
　が、ローマに到着する直前、体調が最悪の状態になりました。たぶん、熱くらい出てたんではないかと思います。鼻水も止まらない、出かける時につけた指の傷は化膿して悪化しているし、意識は朦朧。あの時なんとか動くことができたのは、ひとえにこの後待っているものを楽しみにしていたおかげだったと思います。

　ローマ経由で、夜半にトリノに到着。ここからバスに乗ってホテルに向かうわけですが、自分にもさすがにわかっていました。
「この旅行、楽しむどころじゃない」
　ビンゴでした。
　もともと旅行先ではそれほどよく寝られるタチではなく、トリノのホテルでもそうでした。早朝に目を覚ました時点では、わずかながら体調も戻り、これでなんとかこの先はやっていけるかもと思いましたが、それも日が高くなり、トリノ市内

トリノ駅前早朝の風景。

カミさんと一緒に歩くうちに、甘い考えであると気づかされました。
　とにかく、いつもなら倍の距離を歩いたって平気なのに、この時ばかりはまったくだめ。座り込みたくなるのをなんとか抑えるので精いっぱいだったのです。
　というわけで、アオスタ行きの列車に乗り込んだ時は、じつは青息吐息の状態でした。よく、あのまま意識を失わなかったものだと思います。まあ、トリノを出て一時間くらいは、めったに移動中に寝ないわたしが眠っていたわけですけれども。

アオスタ駅構内からの風景。

動くこともできず、あとはずっと眠っていたという状態は、ひどく無念なものでした。おいしい食事にはありつけましたし、アオスタ独特の風景も楽しめましたから、まったくの無駄だったとは思いませんでしたが、それでも、とてもつらい旅になってしまいました。
　カミさんの相手もできず、なにかがあればすぐ喧嘩になり、彼女には本当に悪いことをしたと思っています。イタリアに行きたがっているのはわたしだけで、彼女はどちらかといえば付き合ってくれていると言った方が正しいからです。
　もっとも、旅の最後に立ち寄ることになっているナポリの友人夫妻に会うことは、わたしもですが、彼女

とっても非常に楽しみなことではあったのですが。
　まさかこの時点では、このナポリ訪問が、アオスタに期待していたものを補ってあまりあるものになろうとは思ってもいませんでした。
　それはともかく、アオスタでの短い滞在期間は、こうして無為に過ぎて行きました。寝ているか、食事をしているか。外を出歩くのは食事のための移動がほとんどで、風景もその間に目にした限られた

古びた外観ながら、中はすごかったVecchio Ristro。

のだったように記憶しています。

　運良く、アオスタにはその州で当時一番のリストランテがあって（この種の評価は時期によって変動するので、現在も一位かどうかは不明……ま、そんなことはどうでもいいんですが。十分満足しましたから）、そこで二度も食事ができましたし、その他の食堂でも思いの外楽しい食事ができました。お土産もいいものがたくさん手に入りましたし、これで、すべての出来事をきちんと把握し、楽しむことのできる気力と体力があれば最高だったのに、と、いまでも思います。

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